社会

ローマ法王の来日

先日フランシスコローマ法王が来日されました。私は教会とは全く無縁ですが、彼が法王に就任して以来、異色の法王として、彼の動向にはとても関心を引かれ、感銘を受けること、しばしでした。

イエズス会に属し、アルゼンチン出身の方です。イエズス会と言えば社会科の教科書に出てくるくらい有名で、21世紀の現在でもイエズス会は質素、厳格な共同生活の下、スピリチュアル、メンタル面の修養は言うまでもなく、多言語などを含む幅広い教養などを提供しているそうです。

ローマ教皇は代々、バチカン宮殿で暮らしてきましたが、何億人のカトリック信者の頂点に立っても、母国での質素な生活をそのまま続けました。大聖堂の近くの小さなアパートに住み、自炊し、普通の自動車に乗り、今回訪日あたり着用なさった法衣も、司祭、枢機郷など、カトリック教会の幹部の人々が使用する衣装の1/10 の値段、1万円強のものだったそうです。

ローマ法王の権威は計り知れないものがあると思いますが、フランシスコ法王は、就任当初からシンプルな生活を継続する一方、教会全体の制度を正すため、あらゆる面で贅沢に相当するお金の無駄使いを見直し、教会の歴史の長きにわたりはびこり続けていた性の乱用などを一掃するなど、精神的指導者として、今までだれも成就できなかったことを断行しました。

ローマ法王は、今回長崎、広島を訪問し、核兵器についてのメッセージを私たち日本人に残して下さいましたが、これは本来、日本の国家元首が国民や、被爆国として諸外国に発信すべき内容であると、日本人として恥ずかしくなりました。

以下、心に残った幾つかの言葉を、今一度かみしめてみたいと思い、ここに書き出してみたいと思います。

最初の訪問地、長崎において:

「人の心にある最も深い望みの一つは、平和と安定です。核兵器や大量破壊兵器を所有することは、この望みへの最善の答えではありません。

私たちの世界は、手に負えない分裂の中にあります。それは、恐怖と相互不信を土台とした偽りの確かさの上に平和と安全を築こうという解決策です。国際的な平和と安定は、相互破壊への不安や壊滅の脅威を土台とした、いかなる企てとも相容れないものです。

軍拡競争は、貴重な資源の無駄使いです。本来、そのお金は人々の全人的発展と自然環境の保全に使われるべきです。今日の世界では何百万という子供や家族が、人間以下の生活を強いられています。

しかし、武器の製造、改良、維持、商いに財が費やされ、日毎に武器は破壊的になっています。これらは途方もないテロ行為です。

軍拡の均衡が平和の条件であるという理解を、真の平和は相互信頼の上にしか構築できないという原則に置き換える必要があります。

今拡大しつつある、相互不信の流れを壊さなくてはなりません。相互不信により、兵器使用を制限する国際的な枠組みが崩壊する危険があるのです。

核兵器のない世界が可能であり必要であるという確信をもって、政治を司る指導者の皆さんにお願いします。核兵器は、今日の国際的、また国家の、安全保障に対する脅威から私たちを守ってくれるものではない、そう心に刻んで下さい。

こういったこと全てのために、信頼関係と相互発展を確かなものにするための構造を築き上げ、状況に対応できる指導者たちの協力を得ることが、極めて重要です。

何百万人という人の苦しみに無関心で良い人はいません。対話することのできない文明による破壊を前に、目を閉ざして良い人はいません・・・.」

そして広島では:

「・・・   貧しい人々はいつの時代も、憎しみと対立の無防備な犠牲者です。私は謹んで、声を発しても耳を貸してもらえない人々の声になりたいと思います。

現代社会が直面する増大した緊張状態を、不安と苦悩を抱えて見つめる人々の声です。私たちの地球を守る能力の著しい欠如、あたかもそれで未来の平和が保証されるかのように行われる、継続的あるいは突発的な武力行使などに対する声です。

確信をもって今一度申し上げます。戦争のために原子力を使用することは、現代において、犯罪以外の何ものでもありません。戦争のための最新鋭で強力な兵器を製造しながら、平和について話すなど、どうしてできるでしょうか。差別と憎悪のスピーチで、誰もが知る偽りの行為を正当化しておきながら、どうして平和について話せるでしょうか。・・・

より正義にかなう安全な社会を築きたいと望むならば、武器を手放さなくてはなりません。武器を手にしたまま、愛することはできません。平和は単に戦争がないことではなく、たえず建設されるべきもの。

私たちは歴史から学ばなければなりません。思い出し、共に歩み、守ること。この3つの倫理は、ここ広島において、より強く、よい普遍的な意味を持ちます。・・・」

先日、初めて日本で武器市が開催されました。日本が武器商人に成り下がろうとしているのです。憲法を変えるということはこういうことかと思いました。

奇しくも、コマンド・アシュターや彼に属する多くの艦隊が、核兵器の使用、第三次世界大戦への危険性を警告している時です。

地球のバランスを崩壊させるトランプの動き、それを支持し続けるアメリカ市民、アメリカのエネルギーもここ数年急激に変化しています。それと平行するかのように、アメリカは巨大トルネード、巨大ハリケーン、爆弾低気圧、山火事など、火と水の自然浄化にますます拍車がかかっています。日本もアメリカに追随し何もしなければ、同じでしょう。

ローマ法王の来日に際し、ヨーロッパでは、現在の首相は<軍国主義者>だと明確に位置づけていました。海外では日本政府をそのように捉えているようですが、日本国内でそのことを自覚している国民はどのくらいいるのでしょうか。

最後に日本を発ち、岐路に着かれた飛行機の中で、記者からの原発に関する質問に対して法王は、個人的な意見として、「原発の自己は大きな災害になり得るが、安全は保証されていない。安全が完全に保証されない限り、原発は利用すべきでない」と明言なさいました。

弱者に対する深い愛のまなざし、穏やかな、かつ、歯に衣を着せない物の言い方、断固とした信念を貫く姿に、私には聖白色同胞団の姿がダブって見えました。